2013年の日本の空き家数は約820万戸、空き家率は13.5%と過去最高を記録した。
多くの国では空き家率は経済状態によって変動するが、日本の場合、戦後一貫して上昇し続けてきた。この背景には、戦後の住宅市場が使い捨て型の構造になったことによる。
核家族化に加え高齢者など一人暮らしの世帯増で空き家は今後も毎年20万戸ずつ増加し、15年後には住宅全体の4分の1が空き家になるという。
(空き家)のなかで増えているのは、住む人がいない住宅や建て替えなどのため取り壊すことになっている「その他の住宅」だ。今回調査では318万戸。空き家全体に占める割合は前回より上がって35.4%から38.8%になった。
国土交通省が2009年に全国の自治体に対して行ったアンケートによれば、回答のあった1217自治体中、空き家や空き店舗が問題となっていると答えた自治体は473に上った。また、40%以上の自治体が「10年前と比べて空き家・空き店舗問題が増加している」と回答している。
国土交通省が2009年1月に行った「土地問題に関する国民の意識調査」によれば、全国平均で40%以上の人が「空き家・空き地・空き店舗の問題」を身近に感じており、土地問題の中で最も身近という結果となっている。
思い切って撤去する決心がついても金銭面のハードルが待っている。取り壊すには最低でも数十万円の費用がかかる。
空き家を撤去し更地にすると、住宅用土地に課される固定資産税の軽減措置(小規模住宅用地は更地の6分の1)が受けられなくなる。つまり更地になると住宅が建っているより税金が6倍になってしまうのだ。
この固定資産税の軽減措置は戦後、住宅建設を促すねらいで設けられた措置だ。このルールを撤廃すればよいと思うが、固定資産税はほとんどの市町村で歳入の約5~6割を占める大きな財政基盤となっている。人口減で地方財政が逼迫するなか、安易に更地への課税を緩和することはできない。
高度経済成長期、東京に集まった人々が夢を託したマイホーム。その後、急速に進んだ核家族化によって家族の絆は断たれ、空き家が急増している。
「空き家は相続と密接に関係。相続した人が40~50代くらい、大体ご自身の家を持っているので、実家を活用することがない。きょうだい3人で相続の場合、3人合意しないと売却も賃貸もできない。意見の合意・形成に時間がかかり、空き家になって放置されるケースが多い。」
(相続人が不明な場合に進める)手続きの件数は近年、急増していて、今や1万5000件近く。この20年ほどの間におよそ3倍になっているんだ。
国土交通省では、“所有者不明の土地”の手続き は、2050年には今の4倍、約4万5000件に達すると見込んでいるよ。
もともと「貸す」という概念が田舎にはないためか、なかなか貸してくれる空き家が少ない。移住希望者が多くなる中で、現状としては物件不足。
家財道具、仏壇などの処分に踏み切れなかったり愛着があったりして、空き家になった当初の時点ではなかなか処分に踏み切れない場合は多い。
国土交通省が2009年に全国の自治体に対して行ったアンケートによれば、空き家問題に自治体が苦慮する要因として、所有者と利用者のマッチングが難しい、付随する農地の利用・処分が難しい、別に宅地開発が行われていてその空き家への需要がない、専門知識を持った職員の不足などが上がっている。
国土交通省が2009年に全国の自治体に対して行ったアンケートによれば、空き家がもたらす周辺への悪影響として「防災や防犯機能の低下」、「風景・景観の悪化」、「不法投棄を誘発する」、「火災発生を誘発する」などが多く取り上げられている。
土地や家が、どのような状態になっていると不審者による放火の危険性が高まるのでしょうか。それは、「管理されていないと思われる土地、建物」です。人の住んでいない家や空き家は不審者が最も嫌う「人の目」があまり届きません。また、燃えやすいもの(枯草、ゴミ、紙ゴミなど)が散乱、放置されている空き家・空き地も表的となりやすいのです。
(2014年7月)10日、台風が近づいていた兵庫県多可町では築40年ほどの空き家が倒壊し、屋根の破片が隣の家に落下しました。
名古屋市内のある商店街にあった老朽化した家屋が倒壊する、という事態が生じた。隣家のブロックを破壊し、車数台を全壊させるなどの多額の損害を与えてしまった。
大田区は、去年4月、空き家に立ち入り調査をしたり、所有者に安全対策を促したりする際の手続きを定めた条例を施行しました。
「家は空気が動かなくなると、湿気などにより劣化が早くなります。天井裏や床下などに湿気が溜まり、床がふわふわしたりしてくるんです。最低でも月に1回は風を通したり水道も水を流すことで、例えば年に1度しか帰ってこなくても変わりなく過ごせると思います」
「見落としがちなのが郵便ポスト。郵便局で転送手続をしていても、それ以外のダイレクトメールやチラシなどが1か月もすると、いっぱい入ります。ポストから溢れ出たチラシなどに放火されてしまうこともあるので、きちんと片づけなければいけない場所です」
地域での取り組みとして、昭和30年台に開発された、1戸あたりが狭小な宅地で空き地・空き家が発生した場合、不動産会社が隣地の居住者に買い取りの打診を行っているところがあり、200件ほどの隣地取得が行われています。また、過疎化が進む地域では定住促進と合わせて空き家の活用促進に取り組む動きもあります。
(神戸)市に土地を無償貸与すれば、建物の解体費を全額補助した上に、固定資産税を非課税にする防災空地整備事業を2年前に開始。空き家の解体を進め、これまでに13か所、計1300平方メートルを確保した。更地にすると固定資産税が高額になることが老朽家屋の解体を阻む一因になっており、全国的に増える空き家対策としても注目されている。
2014年の臨時国会の提出された『空き家対策特別措置法』が11月19日に可決されました。この法案により、国土交通大臣及び総務大臣は空き家等に関する施策を実行するための基本事項を定めることになります。(中略)そして各自治体では空き家等に対する具体的な『空家等対策計画』を定めることができるようになりました。
例えば「定期借家契約」を結べば、更新を前提としていないので、最初からある一定で返すという契約の元、貸すことができます。こういう制度を使って「まずは貸してみる」のはどうでしょう。
東京・大田区は今年(2014年)5月、近所から苦情が寄せられていた空き家のアパートを、法律に基づき行政代執行で初めて強制的に撤去しました。
「一番大事なのが、代執行に至る根拠となる、空き家の適正管理に関する条例。」
戦後から高度成長期へと続いてきた住宅の大量供給と使い捨ての考え方を改めなければ空き家問題は根本的に解決しない