日本には国が集める国税・都道府県や市区町村が集める地方税を含めて数多くの税金があります。その中には、不動産取得税のように不動産だけに課されるものや、固定資産税のように不動産への課税がメインとなっているものもありますが、消費税や印紙税のように、ほかの取引にも広く課されるものもあります。もちろん、税金を逃れるため「だけ」に変なことをすると脱税となってしまうことがありますが、税制について知っていると税金を節約できる場面もあります。
不動産に関する税金の多くは、土地や建物などの評価額を基準に、それの何%というような形で税額を決めています。とはいえ、消費税のように実際の取引価格をベースとすることはほかの税金ではあまり行われず、独自に価格基準を策定しています。
しかも、相続税では路線価を使用しているのに対して、固定資産税などの場合は固定資産税評価額を使っているなど、いくつもの価格が存在しています。
普段から発生していて、知らない人はいないような消費税ですが、実は「消費税」という税金の税率が6.3%だと知っている人は多くないかもしれません。残り1.7%は地方税としての「地方消費税」となっていて、合計は8%です(消費税「等」とまとめて書くことも多いです)。
消費税等は、日本国内で行われる多くの取引に発生しますが、例外的に発生しない分野が定められていて、その1つが「土地の譲渡」です。土地は消費されるものではない、ということもあって消費税の課税対象から外されています。
ただし、土地と建物をまとめて取引するような場合、代金の内訳がわからないような契約書を作ってしまうと、どこまで非課税にできるのか判断がつかないため、全額に消費税が発生してしまいます。現実には専門家が契約書を作るのでそんなことにはならないでしょうが、要注意点かもしれません。
また、仲介手数料は仲介という「サービス」の対価ですので、消費税が発生します。
領収書などに収入印紙が貼ってあることがありますが、そのように文書の作成に対して課税されるのが印紙税です。
領収書であれば5万円以上100万円以下で200円ですが、不動産取引ともなると金額が大きいので、印紙だけでもそれなりの額になります。たとえば、土地の売買契約書や住宅ローンの契約書であれば(契約金額1000万円~5000万円の場合)2万円、建築請負契約書では(契約金額1000万円~5000万円の場合)1万円となっています。
自分で用意する必要は普通ないでしょうが、1枚1万円や2万円の収入印紙がありますので、契約書が収入印紙だらけになる、なんて心配はありません。
普通の物なら契約して引き渡せば終わりですが、土地や建物の場合、権利の異動に関して登記を行う必要があります。その際に発生するのが登録免許税です。
この登録免許税は、取引したものの金額に税率をかけて算出します。例えば、土地の権利を移転する場合は土地の価額に対して1000分の20、住宅ローンの抵当権を設定する場合はローン金額に対して1000分の4、というようになっています。なお、自分が住む住宅の場合には軽減措置があります。
登録免許税は、登記の時に納める必要がありますが、通常は登記の作業を司法書士が行いますので、司法書士報酬とまとめて司法書士へ払う形となります。
不動産取得税は、文字通り不動産を取得した場合に発生する税金で、都道府県が課します。これは自分で手続きするのではなくて、あとから都道府県が税額を計算して納付書を送ってきます。
固定資産税評価額と同様の基準で、その3%を課しますが、宅地は半分として計算されるほか、住宅の場合にも減額があります。
これまでの税金は、取引した一度きりで発生するものでしたが、不動産を持ち続ける限り毎年発生するのが固定資産税・都市計画税です。
どちらも税額は「固定資産税評価額」を基準に計算して、3年に1度評価替えがあります。なお、都市計画税は課していない自治体もあるほか、都市計画区域外では発生しません。
基本的に市町村が課す税金ですが、東京23区では都が課税しています。税率は自治体によって異なりますが、東京都では固定資産税が1.4%、都市計画税が0.3%となっています。
これまた政策的に減税しているケースも多いですが、たとえば住宅の敷地については200平米まで評価額を6分の1にするという措置があり、空き家でも取り壊すと固定資産税が6倍になるからと放置される、という事態を生んでいました。
国税も地方税も、その多くは国の法律で決まっていますが、「法定外普通税」・「法定外目的税」として、自治体ごとに独自の税金を課すこともできます。
不動産にまつわる具体例としては、東京都豊島区でワンルームマンションの増加を抑えるために、建設時に1戸あたり50万円を課す狭小集合住宅税、静岡県熱海市で、居住しない別荘所有者にもインフラ整備などの負担をしてもらうための別荘等所有税などがあります。
バブル期に過熱した土地の転売などに歯止めをかけ、有効利用を推進するために、国税の地価税や地方税の特別土地保有税などが存在しましたが、バブル崩壊という情勢を踏まえて当分は課税しないこととなっています。ただし、法文上は残ったまま現在に至っています。
税制は毎年のように特例が追加・削除されるなど、変更を繰り返しているものです。具体的な事案については専門家に相談されることをおすすめします(し、現実問題として個人が専門家の力を借りずに不動産取引を遂行することなど、ほぼ不可能に近いでしょう)。