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「いよいよマイホームが手に入るね!」
「やっとなんだ!」
「でも、手続きとかが山のようにあって大変で…」
「ただね、しっかりしないと家の権利がなくなってしまうこともあるから、気をつけないといけないよ」
「そうなんだ!?」
「スーパーで売っているような物だったら、取引のたびにいちいち記録するなんてことは現実的じゃないけど、不動産は金額も大きいし、誰が持ち主かわかりづらいから、国がまとめて記録しているんだ」
「そういうことだったんだ…」
「そういう、不動産の権利関係を国に登録する制度を、『不動産登記』というんだよ」
「でも、登記ってどこですればいいの?市役所に行くの?」
「登記は市町村単位じゃなくて国がやっているから、担当の法務局で手続きすることになるんだ」
「ネットでできたりしないの?」
「最近は登記もオンライン申請できるようになったけど、電子証明書を準備したりとかで、いきなり気軽に申し込むわけにもいかないんだよね」
「めんどくさい……」
「司法書士(権利異動の登記の場合)とか土地家屋調査士(表示登記の場合)とか、専門家に依頼して代理してもらうこともできるし、不動産会社から紹介してくれることも多いよ」
「それを先に言ってよ!」
「その代わり、専門家を雇うだけのお金は発生するけどね」
「でも、自分でして失敗しても困るし…」
(そうして登記を依頼してから数日後、完了したということでその旨の書類を受け取りました)
「えっと、これが『登記事項全部証明書』…長い名前だね」
「昔は紙の登記簿をコピーしていたから『謄本』と呼んでいたんだけど、全部コンピューター処理になったから、データを出す形に変わって、名前も変わったんだよ」
「時代は進むんだね」
「でも、昭和の終わりぐらいからコンピューター化を始めて、全部完了するまでに20年ぐらいかかったんだって」
「やっぱり、大変だったんだ…って、この登記簿の住所が違ってない?」
「○○県××市マイスマ町2853番地、って書いてあるよね」
「買った家の住所は○○県××市マイスマ町5-3-1だったはずだけど…騙されたのかな?」
「昔は全国で地番を住所にしていたけど、桁数が大きい数字が続くだけでややこしいから、『住居表示』といって、わかりやすい番号を地番と別に振り直した地域も多いんだ」
「どうやってチェックすればいいの?」
「法務局にも『ブルーマップ』みたいな、地番まで載った地図が置いてあるから、それで確認すれば地番もわかるよ」
「またチェックするものが増えた……」
「大事な不動産なんだからね」
「地図は今ないから置いておくとしても、登記事項全部証明書はどう読めばいいの?」
「大きく分けると、物件の所在を示す『表題部』と、その上に発生した権利を示す『権利部』に分かれているんだ。表題登記と保存登記といって、制度的にも2つに分かれているんだよ」
「あれ、ローンを借りた銀行の名前が入っている?」
「ローンを借りるときには『抵当権』といって、『払えなかったら土地を競売にかけますよ』という約束になっているんだけど、それも登記することで権利を確保しているんだ」
「払えなくなって追い出されたら嫌だから、きっちり返さないとね」
「もちろん、キチンと返しているときは何も起きないし、返し終わったら消してもらえるけどね」
「あと、よくドラマなんかで『権利証』って出てくるけど、そういうのはないの?」
「昔は法務局に権利証を持って行って手続きしていたんだけど、オンライン申請できるようになるとそうも行かないないから、制度が変わったんだよ。…あった、これだ」
「『登記識別情報通知』…?」
「下の方に、剥がしたら貼れなくなるシールが貼ってあるけど、そこに12桁の英数字で番号が書いてあるんだよ」
「ん?番号は、9AP7-…」
「登記をするときに必要な『パスワード』みたいなものだから、むやみに剥がさないほうがいいよ」
「それを先に言ってよ……」
「これならオンライン手続きもできて便利なんだけど、万が一漏れると大変だから、剥がしてしまったあとの管理は特に厳重にしないとね」
「そうだね」
「あと、オンラインに切り替わる前から不動産を持っている場合は、今までの権利証もそのまま使えるから、大切に保管していてね」
「ゴミの日に出しちゃうような人はいないだろうけどね」
ふつう、専門家が手続きを代理するので、必ずしも自分で登記の手続きをやるということではありませんが、何が書いてあるのか理解できるようになると、物件を取引する際に自分で調べることもできるようになります。