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天災は忘れた頃にやってくる~住宅の生活再建の流れ~

日本に住む以上は、災害の襲来は避けられないもの。いざというときにどんな支援が受けられるか知っておくことも、きっと損はないでしょう。
マイスマ制作チーム


提供:仙台市

少し早いですが、9月1日は防災の日です。今年も熊本県で大きな地震が発生するなど、日本に住む以上は、災害は「遭遇すること」を前提とせざるを得ない側面があります。もちろん、建築基準法で決まっている最低限の耐震性能も年を追うごとに向上はしていますし、それ以上の耐震性を持つ建築も、望むことなら実現はできます。ただ、震度7が2回も来た熊本の地震や、想像を絶する規模の津波に襲われた東日本大震災など、想定を上回るような自然の脅威に襲われてしまうことも、決してないとはいえません。

ここでは、不幸にして災害に見舞われて、住む場所を失った場合の支援制度について掘り下げてみることにします。

まずは、罹災証明書

各種の支援を受ける際のベースとして必要となってくるのが「罹災証明書」です。これは、主に住宅などの被害状況を確認して、それに応じたレベル付けをして発行されるものです。

名前の似た「被災証明書」は、「個人」が災害を受けたことを証明するものなので、基本的にはすぐに発行されますが、罹災証明書の場合には被害状況の調査が必要なので、発行までに時間がかかることがあります。可能であれば、被害状況の写真を撮っておくと、役に立つかもしれません。

被害状況については、以下のような段階となっています。

  • 全壊…住居全体が損壊、焼失、流出などした場合で、住居を補修しても二度と住めない場合、あるいは住居が損壊、焼失、流出などによって損害を受けた部分が50%以上の場合
  • 大規模半壊…住居の一部が損壊、焼失、流出などしたが、修理をすれば元通りに住むことができる場合。損壊、焼失、流出などした割合いが半壊より高く、修理費用が高くなるもの、具体的には住居が損壊、焼失、流出などによって損害を受けた部分が40%以上50%未満の場合
  • 半壊…住居の一部が損壊、焼失、流出などしたが、修理をすれば元通りに住むことができる場合、具体的には住居が損壊、焼失、流出などによって損害を受けた部分が20%以上40%未満の場合
  • 一部損壊…半壊以下の被害が出た場合

なお、罹災証明書は公的支援を受ける場合だけでなく、地震保険(後述)や、民間からの支援()を受ける際にも必要となります。また、被害状況の調査のために発行までに時間がかかりますが、申請時点で「罹災届出証明書」が発行されますので、ものによってはそちらを使っても支援が受けられます。

「住む場所」の一時的な確保

仮設住宅


提供:神戸市

避難所暮らしでは生活再建もままなりませんので、まずは住む場所が必要となります。ということで、プレハブなどで仮設住宅が建設されることになるわけです。入居期間は原則2年ということですが、阪神大震災で最後の仮設住宅が解消したのがちょうど5年後の2000年1月でしたし、東日本大震災後の仮設住宅では、6年目に入っても仮設住宅暮らしが続く世帯が2.8万世帯も残っており、仮設住宅の老朽化、残る人たちの高齢化などが問題となっています。

みなし仮設住宅

仮設住宅といえども建設には一定の期間・資材が必要ですし、東日本大震災のように被災地が広範囲に及ぶとなると、建設に適した土地を確保することも困難、という状況ともなってきます。さらには、仮設住宅の建設には1戸あたりおよそ500万円、東日本大震災の時は600~700万円と、意外とコストが嵩むものです。

そのような事情や、空き家が増加を続けているという時代背景もあって、一般の賃貸住宅を仮設住宅として使うという「みなし仮設住宅」という仕組みが東日本大震災以降、行われています。これは自治体が賃貸住宅を借り上げて費用を払い、被災者に暮らしてもらう、という制度ですが、事実上は被災者が賃貸契約をして、家賃を公的に補助する、というような制度とも取れます。

恒久的な住宅であるので住環境は仮設住宅より良好ですし、適当な物件があれば自分で選べること、さらには場所によっては仮設住宅の供給すら間に合わなかったこともあって、東日本大震災の際には、仮設住宅よりみなし仮設住宅を選ぶ人のほうが多くなりました。そして、2012年には、みなし仮設住宅による確保も仮設住宅供給の柱とするように政策転換が行われています。

いいことずくめにも聞こえるみなし仮設住宅ですが、問題もあります。自分で入居先を選べるので、災害前に構築していた地域のコミュニティが崩壊したり、逆に移り住んだ先でも被災者同士で共有できる場がなかったりといった、さらには自治体を超えて移住してしまって人口が失われる点などが問題点として挙げられています。

本格的な再建


提供:神戸市

ふつう、公営住宅は低所得者向けということで、入居には所得制限がかかりますが、災害復興で建てられる災害公営住宅については、被災者であれば最初は収入要件がかからない他、家賃も通常の公営住宅より安価に設定されています。

ただ、東日本大震災では、高台での土地整備が追いついていない、あるいは資材・人手が集まらない、予算が足りないなどで、なかなか建設が進んでいません。また、阪神・淡路大震災のあとには、既存のマンションを県が借り上げて災害公営住宅として提供したのですが、借り上げの期限が20年となっていた結果、20年が過ぎた昨今に退去を求められる事例が出ていて、問題となっています。

経済的な支援

生活再建の支援としては現物の住宅によるものだけでなく、金銭的なものも欠かせません。ということで、そちらについても掘り下げていきます。

ただし、原則論としては住宅の地震災害についてはあくまで「自己責任」となっていますので、支援だけで乗りきれるものではありません。

地震保険

これは過去にもマイスマ総研で触れたことがありますが、地震による損害を補填するための保険です。政府がバックアップしているものではありますが、建物金額の半分までしかかけることができないため、これだけで完全に再建するというのには足りない部分もあります。ただ、「何もない」よりは確実に有効なので、持ち家の場合、特にローンが残るような場合にはかけておいたほうがいいでしょう。

被災者生活再建支援金

再建支援ということでお金が給付されますが、住宅の全壊で100万円+再建する場合には200万円と、住宅を再建するには心もとない額しか出ません。

二重ローン解消のガイドライン

公的支援は頼りにできず、地震保険もかけていなかった場合、住宅はなくなってもローンだけが残ってしまいます。新たに住宅を建てるにしても借りるにしても、既存の住宅ローンが重くのしかかってきます。

大災害のたびに問題となっていましたが、2015年に全銀協が「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を制定して、自然災害で支払えなくなった住宅ローンの救済を行っています。

専門家からの無償の支援、信用情報への非登録など、通常の債務整理と比べて格段に好条件となっています。

住宅金融支援機構の融資

「フラット35」で知られる住宅金融支援機構ですが、住宅の再建や補修などのための融資制度、さらには被災地で賃貸住宅を提供しようとする人への融資制度などを設けています(詳細)。

注意

支援の制度や運用に関しては、災害ごとに変化していきます。あくまで平時の参考、「心の備え」として使っていただければ幸いです。
 

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