近所に1件ぐらいはある不動産会社、でもよく知らないことが多いのではないでしょうか。ここでは、そんな不動産会社を各方面から分析していきます。
「どこの街に行っても、不動産屋さんってあるよね?」
「人が住んでいるところにはだいたいあるよね。」
「全国で何件ぐらいあるのかなあ?」
「えっと、……あったあった。」
財務省の財政金融統計月報によると、不動産業を営む法人数は2012年時点で304,000社あり、全法人のうち11.1%を占める。
「そんなに不動産会社だらけなの!?」
「これは資産管理会社とか、住宅のオーナーになって貸しているだけ、というような会社も入るから、いわゆる『不動産屋さん』の範囲に入らないものもあるんだよ。」
「そうなんだ。」
「住宅の販売とか賃貸の仲介を行っている、いわゆる『不動産屋さん』(宅地建物取引業者)に絞ってみると、免許件数が2012年で12万社ちょっと、ざっと人口1000人あたり1社ある計算だね。」
「でもやっぱり多いね。」
「さっきの不動産屋さん以外も入れた不動産業の事務所は全国に37万軒くらいあるけど、5人以上いるところは7分の1ぐらいしかないんだって。」
「僕たちも2人で不動産屋さんを始めてみる?」
「免許もないでしょ?」
宅地建物取引業の業務の適正な実施を確保するため、宅地建物取引主任者という名称を宅地建物取引士という名称に変更する
出典 国土交通省
「専門の資格があるんだね」
「そこから知らなかったの?」
「毎日通い詰める店じゃないしね。」
「宅地建物取引主任者、4月からは宅地建物取引士になるけど、不動産屋さんが営業する上で5人に1人は免許が必要で、重要事項の説明などは免許がないとできないんだよ。」
「名前が変わるだけじゃないの?」
どうして現行の宅建主任者を「士」にしなければならないのか、その理由が全く分からない。宅建主任者の資質を向上させるため、現在、約90万人いる宅建主任登録者の資格をはく奪・ご破算して再試験を行うというのなら意味はあるが、名称だけ変更し、新たな「士」に何を求めるのかが分からない。
「ただ、名前の変更だけじゃなくて、暴力団排除規定が入ったり、他にも変化はあるんだって。」
「おう、呼んだか?」
(…どうしよう)
「また物件のチラシが届いているね。」
「コンコン不動産…**県知事(3)○○号、なんだ」
「ん?なんの番号?」
「扱う人とは別に、不動産屋さん自体にも免許があって、その番号なんだよ。」
「こっちには『国土交通大臣』って書いてあるけど、どう違うの?」
「1つの県内にしか店舗がなかったら県知事の免許、複数にまたがるなら国土交通大臣の免許になるけど、特に効力に違いがあるわけじゃないよ。」
ややもすると、大臣免許の業者の方が知事免許の業者より優れているとか思いがちですが、全く免許の種類によって優劣はありません。
「なんで途中に()が入るのかなあ?」
「()の中の数字は免許を更新した回数で、昔は3年ごと、今は5年ごとに更新するから、だいたいどれくらい不動産屋さんを続けてきたかがわかるんだよ。」
「不動産屋さんの店頭に、よく赤と緑で動物のイラストがあるよね?」
「それはね、業界団体のマークなんだよ。ハトのほうが『全国宅地建物取引業協会』(http://www.zentaku.or.jp/)、うさぎのほうが『全日本不動産協会』(http://www.zennichi.or.jp/)という団体に入っている印です。」
「業界団体って、どうしても入らないといけないの?」
「実は、不動産物件は金額も大きいから、不動産屋さんが営業するには、本来1000万円以上の保証金を積まないといけないことになっていて…」
「1000万円って、すごい額だね。」
「ただ、この2つのどちらかの業界団体に入ると、系列に『保証協会』というのがあって、たくさんの会社をまとめて保証することで1社あたりの負担を抑えることができるから、ほとんどの不動産屋さんがどちらかに加盟しているんだよ。」
「ハトやウサギとマークがあるけど、僕たちもこんな色になればマークに採用してもらえるかなあ?」
「……似合わないね。」
「地域ごとに個性的な不動産屋さんもあるけど、どこに行っても同じ看板で見かける不動産屋さんもあるよね?」
「もちろん大手の会社だと、ほんとうに自分で出店していることもあるけど、中には『フランチャイズ』のところもあるよ。」
「フランチャイズって?」
「地元の不動産屋さんと、ブランドを持っている本部が契約して、ブランドやシステムを使ったり指導を受けたりする代わりにそのロイヤリティを払う、そんなシステムなんだよ。」
「ということは、中身は地元の不動産屋さんなんだ。」
「本部から指導したりもしているけど、店ごとにそれぞれ違ってくるんだよ」
センチュリー21の最大の特徴は、直営店を持たないフランチャイズです。
「不動産の物件はたくさんあるし会社も多いし、うまく結びつかないこともあるんじゃないかなあ?」
「昔は情報を流すのも大変でその仲介業者があったりもしたけど、今は一括して管理するシステムがあるんだよ。」
レインズとは、Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)の略称で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピュータ・ネットワーク・システムの名称です。
指定流通機構の会員不動産会社が不動産情報を受け取ったり情報提供を行うシステムで、会員間での情報交換がリアルタイムで行われています。
「たくさんの会社があるところで情報システムは必要不可欠だし、まとめて運営するのが効率的だよね。」
「不動産屋さんに『仲介』って書いてあるけど、どういう意味なの?」
「スーパーで買い物するときは、スーパーが買ってきた商品を自分が買うという取引だけど、不動産の仲介の場合は、物件の持ち主は不動産屋さんとは別にいて、不動産屋さんは契約を結びつける手伝いをする、という感じなんだよ。」
不動産取引の仲介(=媒介)とは、不動産の売買や賃貸借に関して、両当事者の間に立って、売買契約や賃貸借契約の成立に向けて尽力する行為をいいます。
「でもそれだったら、直接買い手と売り手で契約すればいいんじゃないの?」
「もちろん不動産に詳しい人同士で話がつくようならそれで構わないけど、普通の人は不動産のことについて詳しくないし、自力で取引相手を見つけるのも難しいから、専門家が間に入ることで円滑な取引を行えるようにしているんだよ。」
「不動産屋さんって、売り手にとっても買い手にとっても役に立っているんだね。」
「ただ、両方を同じ不動産屋さんがやることを『両手仲介』と呼ぶんだけど、ちょっとややこしいことが起きてしまうこともあるよ。」
「というと?」
「売り手としては高く売りたい、買い手としては安く買いたいというのが本音だから、どっちかに有利になるようにすれば、相手には不利になっちゃうよね。」
「うんうん。」
「おまけに、自分のところで契約できれば売手と買手の両方から手数料をもらえるという、不動産屋さん自身の事情もあるから、余計に公平な取引から外れがちになるんだよ。」
「そうなんだ~」
不動産業界関係者の多くが、実は、売り手にとってデメリットが多いことを知っているのだ。
両手仲介のデメリットは不動産業者が買い手の側に立ったり、契約数を稼ごうとしたりして、成約価格が下がる傾向にあることだ。
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執筆:マイスマ制作チーム