「夢のマイホーム」なんていう言葉もありますが、まずは家を買うのがどういう目的なのか考えておきましょう。現金払いで買っても余裕があるような経済状況なのでしたら衝動買いしても構わないのかもしれませんが、大半の家庭では「人生最大の買い物」と形容されるように、返済に数十年かかるローンを組んで買っていくようになります。それだけ大きな買い物となると、今後の人生設計に大きく影響するものになりますので、将来像はしっかり描いた上で、購入することが必要でしょう。
自宅の「資産価値」と言われても、ピンと来ない方がいるかもしれませんが、買った自宅も1つの不動産物件ですので、資産価値を持ちます。中古物件の場合は実勢価格で取引されるので、(売り急いでいるなど特殊事情がある場合は別として)買った時点でいきなり価値が変化するということはないかもしれません。
一方で、新築物件の場合、新築であること自体が一定の価値を持っています。不動産の取引規約上、1日でも誰かが住んだ物件は「中古物件」扱いとなるので、入居した時点で「新築である価値」は消滅して、物件にもよりますがざっと2割程度価値が下がることになってしまいます。
ここで100%ローンを組んでいると、ローンの金額に対して家の価値は既に下回っている、という債務超過状態(オーバーローン)になります。もちろんきっちり返せれば問題はない、とも言えますが、万が一何かがあると、「家を売り払ってもローンを返しきれない」ということです。
家を買う上で、土地や家そのものの代金だけでなく、税金などの諸費用や引越し代、新しく買う家具・家電など何かと資金は必要です。特に新築の場合は、それだけでなくて頭金もきっちり入れて、住み始めた時点からいきなりオーバーローン、という状態をできるだけ避けることが賢明です。そして、借りる金額が少なくなれば、もちろんローン審査・金利の面でも有利になることでしょう。
投資には、「出口戦略」という言葉があります。「どのような形で投資を終わらせて損益を確定させるか」という意味合いです。とりわけ建物では、(通常の場合)年数を追うごとにどんどん貸せる家賃も下がる一方で、逆に維持費はかさんでいきますので、どこかで売却して損益を確定させることになります。
自宅の場合、「高くなったから売る」というものではもちろんないので、投資の時と話は違ってきます。ただ、転勤や家族構成の変化といった状況変化があった時に、「売りたくても売れない」リスクについては考えておく必要があります。仮に住まなくなった家が売れなかったとしても、固定資産税やマンションであれば管理費・修繕積立金は発生し続けます。
逆に、(例としては少ないですが)マンションでは、周辺環境の改善やコミュニティによる良質な維持管理もあって、築30年が過ぎた今も分譲当時の資産価値を保っている、という例もあります。
なお、日本の法運用上、不動産について(誰かに譲渡せずに)自ら所有権を放棄することは、基本的にできないことになっています。相続放棄という手段もなくはないですが、売れない不動産を一度持ってしまったら、マンションであれば取り壊されるまで、土地であれば何かでなくならない限り半永久的に税金その他を負担し続けることとなってしまいます。
これまでいろいろ経済的な話をしてきましたが、当然ながら自分が住む家である以上、純粋に経済学的な計算だけで選んでしまっては、それはそれで「住みにくい」ということにもなりかねません。いろんな判断基準はありますが、最終的に決めるのは自分自身です。住宅にもいろんな視点があることを踏まえて、悔いのないように決めて行ってください。
執筆:マイスマ制作チーム
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