2020年、日本はオリンピックに向けて外国人観光客が増える一方、短期滞在するための宿泊施設が足りないという大きな問題を抱えています。民泊サービスはその救世主となりうるのか?いま大変注目されています。しかし民泊という新しい概念に法整備が追い付いていないのが実状です。現状どういった問題があり今後どのような施策が検討されているのか噛み砕いて解説してみたいと思います。
「民泊」とは、読んで字のごとく「民家に泊まること」です。 皆さんも一度は友人や親せきの家に泊まったことがあるかと思いますが、実はこれも「民泊」にあたります。 一方、今増えているのは、ホテルや旅館のように宿泊の対価を支払って泊まる「民泊」です。 増加の背景には、インターネットの仲介サービスの存在があります。
Airbnbは、コミュニティのメンバーから部屋をレンタルできるサービスです。自宅の個室1つやマンション1部屋、別荘やアパート1棟などその種類はさまざま。中にはクルーザーまで貸し出されています。部屋を貸し出すメンバーは「ホスト」、部屋を借りる人は「クライアント」と呼ばれますが、ホストは世界192カ国3万4000の都市に散らばっており、クライアントは旅行の宿としてホストから部屋をレンタルすることができ、近年サービスを利用する日本人クライアントも増えています。
2005年2月設立。airbnbのライバルとしてシンガポールに拠点を置き、主にバケーションレンタル最大手として民泊を行う。
AIRBNBを始めとする民泊仲介サービスの台頭によって民泊を利用して小遣い稼ぎをする人が急激に増えました。
日本には元々このようなサービスはなかったわけですから現行の法律が追いつかず、誰でも簡単に始められたわけです。
するとマナー違反が徐々に増え始め、近隣住民から苦情が出始めたことで事態はより深刻になりました。
いま民泊問題において最も議論されているのは「旅館業法」という法律で、昭和23年に施行されました。
旅館業法 第二条
4 この法律で「簡易宿所営業」とは、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものをいう。
特に焦点となっているのがこの「簡易宿所営業」の項目です。現在の対価を支払って泊まる「民泊」のほとんどがこの「簡易宿所営業」に当たるのではないかと議論がなされているわけです。
例えば、「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」とされています。じゃあ寝具を提供しなければ旅館業法に当たらないのでしょうか?
また、「営業」とは「不特定多数の人」を対象に「反復継続」して事業として行うこととされています。旅行中に仲介サービスを利用して有料で部屋を貸す行為は反復継続に当たるのでしょうか?
こういった法律の解釈の及ばないような事例が出てきてしまっているのです。ですから早急に法の整備が必要となっているわけです。
そもそも旅館業法が制定された目的はなんだったかというと、以下のようにあります。
旅館業法 第一条
この法律は、旅館業の業務の適正な運営を確保すること等により、旅館業の健全な発達を図るとともに、旅館業の分野における利用者の需要の高度化及び多様化に対応したサービスの提供を促進し、もつて公衆衛生及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。
法律が制定された当時の日本は今よりずっと衛生状態がよくなかったため、疫病が発生した場合にすばやく原因を特定する必要がありました。
そういった背景から生まれた法律なのです。現在の日本の衛生状態は良いですし、必要ないのではないかと思われる方もいるかもしれません。
ところが、今や日本の外国人観光客は2000万人ともいわれていますから、今後さらに増加の一途をたどるとするならば今よりも衛生状態をきれいに保つことが難しくなることは間違いありません。
そういう意味では昔と状況は違えど、旅館業法もまた価値を見直す必要があるのかもしれません。
世界的に見ても民泊仲介サービスは新しいビジネスモデルとして注目されています。
そして同時に日本のみならず、様々な国で波紋を呼んでいるようです。
Airbnbの宿泊所は、バルセロナ全体の15%近くを占めています。 利用者が急増したことを受けて、カタルーニャ州は制限をかけることにしました。 今後、部屋を貸す人は必ず当局に申請し、夜は在宅していなければならなくなります。 この男性は休暇中に、この自分のアパートを貸し出しています。 しかし、法律が変われば貸し出すことができなくなります。
ニューヨーク市ホテル協会会長のダンダパーニ氏は、5軒のホテルを運営するアップルコアホテルグループの社長です。民泊はホテルから客を奪うだけでなく、ホテルが守る規則や規制に従っていないと非難します。
波紋を呼んでいる一方で、民泊に合わせた法改正をする国も増えてきています。
40年間あった法律が廃止され、2015年3月にロンドンにある主たる住まいの短期賃貸を許可する法律が成立。
2015年3月に主たる住まいの短期賃貸を許可する法律が成立。
2014年3月にフランス全土の主たる住まいの短期賃貸を許可する法律が成立。 第二の住まいの賃貸も許可されているが、都市によって規則が定められる。
実は日本ではいま、規制緩和に向かって政府が動きはじめています。
今年2016年に決着がつくのではないかといわれています。
時代は常に変化しています。旧時代の規則に縛られていては新時代に対応できません。だからといって長く続いた規則を安易に変更してしまっては事態が悪化することにも繋がりかねませんよね。
ですから、旧時代から続いた規則を尊重しつつ今の時代合うように調整する。そんなバランス感覚がいま求められているのだと思います。
執筆:マイスマ制作チーム